安川電機の社風

堅実な社風

北九州に本拠を構えて世界に進出した、100年以上の歴史を誇る郷土の雄。良くも悪くも歴史と伝統に基いた保守的な社風で、オーナー色は無いものの、古い年功序列は色濃く見える。手掛けるビジネスは手堅く、新規事業にも積極的に手を出そうとするが、本気で力を入れるまでの時間が非常に長く、試作と検討を延々と繰り返している間に同業他社に先を越されるような事例が垣間見られる。石橋は叩いて叩いて叩きまくって、でもまだ叩いている状態。であるが故に、走り始めた事業にハズレは少なく、モーター、インバータ、ロボットを始めとする旧来製品と、省エネ対応機電などの新規製品のポートフォリオバランスが良い。


100年企業の伝統

国産の100年企業の伝統に基く企業文化を保ち続けている。創業の地、北九州市では新日鉄住金やTOTO(旧東陶機器)と並ぶ優良企業と認識されており、保守的な傾向はあるものの、堅実な経営による手堅さには定評がある。九州全体で見てもトップクラスの超一流企業であり、顧客はトヨタ自動車など国内外の一流メーカーばかり。黒崎や行橋の事業所の周辺では、安川(YASUKAWA)の作業着を着たままで工場の外を歩くことを、むしろ誇らしいと言う社員もいる。安川モートルなどの子会社の業績も好調。事業とは直接関係ないが、陸上部など企業スポーツにも力を入れており、男子マラソンではオリンピックに出場する選手がいる程のレベルであることは、あまり知られていない。


フランクな雰囲気

社歴の長い大企業には珍しく非常にフランクな企業文化。社員同士を役職名で相手を呼ぶことは皆無で、一般層の人間でも社長や役員層を「○○さん」付けで呼ぶ。堅苦しく息苦しいことない。ベテラン層の一般職(転勤のないエリア職)の女性は、同期や後輩の総合職男性が課長・部長として戻ってくることもあり、管理職に対してとてもフランクに話す光景が見られる。会社全体として先輩や上司にも気軽に相談しやすい雰囲気がある。平社員であっても工場長や事業部長、役員レベルとも話す機会があったり、社長が各事業部に巡回して「対話集会」を開催したりと、社員を大切にしようとする文化がある。


グローバル企業

本社が九州であることから、地域に根ざすグローバル企業の地位を自負しており、事実、海外売上高比率が高く、海外の市場を意識した製品を製造している。そのため海外の拠点と頻繁に会議やメールや出張も多く刺激を受ける事が多い。社費で留学する社員もおり、語学(特に英語)が得意であれば、活躍できる場面は多いだろう(但し、勤務地はほどんどが九州)。また、最近では優秀な社員が世界各地から集まってきており、地元の九大、東大だけでなく、ニューヨーク大学、コロンビア大学など、社員の出自は非常にグローバルになってきている。


社内派閥の存在

建前では社内に派閥はなく、能力と実績があれば学歴に関係なく昇進することができると言われているが、実際のところ派閥は存在する。主な派閥は、金融機関(旧第一勧銀)派閥、創業家派閥、大学系(慶応義塾大学、九州大学など)学閥、叩上げ派閥など。派閥によって、社内体制が変わる傾向が強くなっており、内部の昇格についても、派閥によって左右されている。派閥の中でも最も上位役職者に顔を知られたり、気に入ってもらえると、同期入社の中でも出世をしやすい。派閥に入っていなくても、実績や能力を評価されると出世することは可能であるが、担当部長どまりとなることが多い。


リストラの歴史

社員を大事にする企業文化だといわれているが、オイルショックやバブル崩壊などが発生するたびに社員のリストラを行ってきたという歴史がある。オイルショックの時に金融機関からの要請では大規模な人員削減を経験しており、それ以外でも業績が悪くなった時に人員削減を行うことが当たり前となっている。最初にリストラの対象となるのは子会社の社員であり、社内でも本社採用と子会社採用を区別する傾向が強くなっている。よって、終身雇用を期待して安川電機グループの子会社に入社する人は、この点をよく留意すべきだろう。